ボルドーワイン委員会(CIVB)の技術部門で働くローラン・シャルリエは、国立農業研究所(INRA) とフランスぶどう・ワイン研究所IFV)との共同計画« ニューヴァイン Newvine »に直接携わっています。
この3つの組織が協力して、ベト病やウドンコ病などの主な病害への抵抗力が強く、ボルドーワインの特性を保ちながら気候変動に対応できる品種作製の企画を進めています。そのために国立農業研究所が開発した耐性の強い品種に、ボルドーでよく用いられるカベルネ・フランとプティ・ヴェルドを交配させました。« 交配すると、基の素材と全く異なるものが得られます。プティ・ヴェルドその2ができるわけではないのです »とローラン・シャルリエは説明します。彼によるとこの交配は«ボルドーの品種特性をもつ全く新しいぶどう品種を生み出し、明日のぶどう栽培に備える»ことを意味します。
新品種の性質を見極める段階に続いて、醸造しテイスティングする段階があり、計画は2030年まで続く予定です。
国立農業研究所のアニエス・デストラック=イルヴィンヌによると、品種が早熟か晩熟かによって差はあるものの、気候変動によりぶどうのフェノール化合物の生成が早められることは間違いないそうです。この現象に対応するために彼女が期待しているのは品種選択の他、国立農業研究所、ボルドーワイン委員会、ぶどうとワイン科学研究所(ISVV)の3組織共同の栽培試験計画ヴィトアダプト VitAdaptです。
同計画に従って2009年、ジロンド県のグランド・フェラッドにある国立農業研究所の畑に試験区画が設置されました。そこにはフランスと欧州産の52種の異なる品種が同一種の台木に接ぎ木されて植えられました。ヴィトアダプトに沿って、気候変動下で従来のボルドー品種がどのような特徴を得るのかと、試験品種の新たな環境への適応性と品質レベルを観察しています。既に第一回目のテイスティングが行われましたが、新たな環境における各品種の特性を予測するには、今後数多くの試験が必要です。
«畑の収穫量減少に加えて、ぶどう樹の衛生面で不安を訴える声が一部の生産者の間で上がっています»と話すのは、国立農業研究所のナタリー・オラ研究員です。
しかしこのような不安は台木の技術革新により解決されるはずです。今日フランス国内では31種の台木が認められており、そのうちの大部分はフィロキセラ禍のあと間もなく作られたものです。そのうちの5種類だけで国内ぶどう樹全体の75 %を占めています。従って、台木においては多様性や現代性が欠けていると言えましょう。この欠陥を補うため、ナタリー・オレは二つの方法を提案しています:
ぶどう樹そのものに関する研究・開発法はこれとは異なってきますが、問題への解決策の中心に植物素材があるとする意見で研究者は一致しています。決定的な結果を得るにはまだ数年かかるとはいえ、これらの研究が非常に有望であることが既に証明されています。
性攪乱法で健全なぶどうを、シャトー・ダレム
AOCフロンサックにあるシャトー・ダレムでは、数年前から持続可能なぶどう栽培を実践しています。この方針に基づき、ぶどうにつく害虫への対策として性攪乱法を取り入れました。青虫の成長を妨げる自然現象を利用して、ぶどうへの害を防ぎます。働き手への毒性がなく、動物相や環境にも影響しないなどの多くの利点があります。シャトー・ダレムはバイオ管理を用いた栽培法でAOCフロンサックのリーダーの一つに数えられます。