ファブリッジオ・ブチェラ氏は2年前からボルドーワインスクールで認定講師としてその尊い知識を生徒たちに伝授しています。疲れ知らずのエモーション伝承者にお話を伺いました。
「昔から私は2つのことに絶大な興味を持っていまして、ひとつは科学、もうひとつはソムリエと醸造学です。本当の意味で初めてワインというものを知ったのは、高校3年生の時の研修旅行先のブルゴーニュのぶどう畑でした。その後私は大学に入り物理学の修士号を、続けて理学の博士号を取得して、またそれと平行してイタリアのソムリエ協会でソムリエの資格も取りました。
あの時代のみんなの反応はかなり面白かったですよ。大学の友人は、バーやレストランでワインをサービスしたいと言う私がかなり風変わりな奴に見えたようだし、ソムリエの仲間たちも私を奇妙な奴だと思っていて、つまりソムリエが将来の理学博士と肩を並べるのは普通じゃないってね!」
「学校の最初の醸造学の授業でひとめぼれ。16歳でした。ベルギーでは論議抜きでワインと言えばボルドーでしたからね。それに私は昔から歴史に興味があったから、1855年の格付けランキングには一種の魅惑さえ感じましたよ。」
「私の基盤となる科学的な面はよくあるワインの説明とは違った趣きになるから、読者や生徒たちはグーグルで『ボルドーワイン』と入力しても出てこないような観点を学べるでしょう。私が教育関係に携わっていた何年もの間に習得したこともあるけれど、それでも今までのいろいろやってきた仕事の中で、自分の主軸というものは常に同じですよ。根本的に私は一般的なテイスティング方法には関心がないです。私のテイスティングは科学的基礎を用いて、私のワインに対する情熱を伝え、生徒たちにワインへの感動を見い出させ、そしてワインの歴史を知ってもらうということなんです。それから教えることと書くことはほんと大好き。読者と学生から質問を受けると、はてなと私は再度疑問を抱くわけで、それによってまた更に前進することが出来るんです。」
「この質問は、ワインのあらゆる手がかりを探していた16歳の自分を彷彿させますね。私にしてみれば唯一のマスターキーなんていうのは存在しません。もしあったらもうとっくにインターネットに載ってるでしょうしね。ワインにはヴィンテージ、ブドウ品種、地域とか、そういった個別のカギというか糸口がたくさんあるんです。まずその糸口を見つける手段を探してほしい。会話や書面などから、またそれを受け取った学生や読者の中で個人的に糸口に興味のある人とかいますから。
テイスティングするのはその人自身であって、私はその人の頭脳に入ることなんてできない。教育というものは、強制しないで提案する、そしてなおざりにしないという謙虚な姿勢が大切ですよ。ほら、考古学者が何重もの地層を自らひとつひとつ手に取って調べるように、テイスティングではね、自らそれが何でどういうものなのかをあらゆる手段で表現することが大事になる。そして自分の持っているボルドーワインの糸口と話し相手の持つ糸口のひとつが共鳴すれば、それがまた次の糸口へとなっていくわけです。
個人的な努力、研究とテイスティングがワインの知識をさらに深めることになるんです。
幅広い分野:ワインと食品のペアリング
好きな分野: ボルドーのワインの歴史